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東京地方裁判所八王子支部 昭和42年(ワ)763号 判決

原告

吉川英康

被告

有限会社東雲陸送

ほか一名

主文

被告らは原告に対し各自金一、一二八、四一三円及びこれに対する昭和四二年一〇月二一日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを一〇分し、その七を原告の、その余を被告らの負担とする。

この判決は原告勝訴の部分に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求める裁判

一  原告

1  被告らは各自原告に対し金八、一二八、〇七一円及びこれに対する昭和四二年一〇月二一日から年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

との判決並びに仮執行の宣言

二  被告ら

1  原告の請求はいずれもこれを棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

との判決

第二請求原因

一  (事故の発生)

昭和四一年七月一八日午前一時一五分ごろ、東京都立川市錦町六丁目二七〇一番地先日野橋交差点において、立川市役所方面から日野橋方面に向い進行中の田倉啓次(以下田倉と略称する)運転の普通貨物自動車(以下甲車と略称する)と日野橋方面から府中方面に向けて右折中の被告小島賢生(以下被告小島と略称する)運転の大型貨物自動車(以下乙車と略称する)とが衝突し、田倉運転の自動車に同乗中の原告は左上腕切断創、頭蓋開放性骨折、右手掌、頭頂部、顔面切創の傷害を負うた。

二  (被告有限会社東雲陸送の地位)

被告有限会社東雲陸送(以下被告会社と略称する)は、乙車の所有者であり、これを自己のため運行の用に供していた者である。

三  (被告小島の過失)

被告小島は、事故地点を右折するに際し、対向の直進車甲車が約七〇ないし八〇メートル前方を相当高度のスピードで進行して来るのを認めていたのであるから、このような場合、直進車に進路を譲り、その通過を待つて右折する等事故の発生を未然に防止すべき注意義務があるのにこれを怠り、漫然右折を開始した過失により、甲車と衝突し、本件事故を惹起したものである。

四  (損害)

1  休業損害 二二二、〇〇〇円

原告は大工職人として事故直前の平均収入は一日二、〇〇〇円であつたところ、本件事故により、事故の日より昭和四一年一一月三〇日まで一三六日間就業不可能となつたのであるが、一ケ月の稼働日数を平均二五日とすれば、右期間内に少くとも一一一日間稼働し得たはずであるから、その合計二二二、〇〇〇円の休業損害を蒙つた。

2  労働能力の喪失による損害 七、四二五、一六九円

原告は、大工職人として事故当時の平均収入は一日二、〇〇〇円であつたから、一ケ月の稼働日数を平均二五日と計算して、一年間の平均収入は六〇〇、〇〇〇円となる。原告の事故当時の年令は二三歳であり、六〇歳に達するまで三七年間は少なくとも事故当時の平均収入を継続して得られたはずであるから、これを基礎として、事故がなかつたならば原告が得べかりし利益を、ホフマン式計算法(複式)により中間利息を控除してその現在額を算出すれば、一二、三七五、二八二円となる。ところが原告は本件事故により左手を切断したため、大工職人を断念せざるを得なくなつた。大工職という手工的熟練労働者にとつて、片腕を失うということは、他の職種の労働者の場合よりも、より一層重大な打撃となる。そのような事情を考慮すれば、原告の労働能力喪失の程度は少なくとも六〇%と見積ることができる。したがつて、原告は本件事故により七、四二五、一六九円の得べかりし利益を失なつた。

3  治療費その他の支出 三四三、二九七円

原告は、昭和四一年七月一八日から同年九月三日まで立川市所在川野病院に入院し、退院後も同病院に通院治療を受け、同年一〇月四日から横浜市所在恩賜財団済生会神奈川県病院において通院治療を受けた。また、左腕には義手をつけ、医師の指示により山梨県下部温泉において一七日間の転地療養をなした。その間に頭書金額の支出をしたが、その内訳は次のとおりである。

(一) 左手焼却費 五〇〇円

(二) 入院費及び手術代等 一七一、一〇〇円

(三) 附添婦食事代 九、二五〇円

(四) 附添婦給料 四八、九五〇円

(五) 温泉治療代 三〇、四二八円

(六) 通院費及び温泉行交通費等 一三、八五〇円

(七) 義手代 四二、五〇〇円

(八) 氷代等 七、三七九円

(九) 栄養食品代 一二、三九五円

(十) 済生会病院治療費 六、九五五円

4  慰藉料 二、〇〇〇、〇〇〇円

原告は、本件事故により上記のとおり瀕死の重傷を蒙り、五〇日間入院して左上腕切断等の手術を受けた。現在左腕には義手をはめている。頭蓋骨陥没による傷害は治癒し、脳に異常を残してはいないものの、気候の変化によつては頭痛を伴うのを免れ難い。右のような肉体的苦痛に加え、二三歳の健康な男子が不具者として、父の厄介になりながら廃人に近い余生を送らねばならなくなつた精神的苦痛は大きい。右の事情を考慮すれば、原告に対する慰藉料としては二、〇〇〇、〇〇〇円を相当とする。

五  (保険金の受領)

原告は、自賠責保険金一、八六二、三九五円を受領した。

六  (結論)

よつて、原告は、被告小島に対しては民法七〇九条により被告会社に対しては自賠法三条により各自八、一二八、〇七一円及び右各金員に対する本件訴状送達の後である昭和四二年一〇月一二日から支払済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第三請求原因に対する被告らの答弁

一  請求原因第一項中、原告の負うた傷害の程度は不知、その余の事実は認める。

二  同第二項の事実は認める。

三  同第三項中、被告小島の過失は否認する。すなわち、乙車は本件交差点において既に右折していたのであるから、甲車の運転者田倉としては乙車の進行を妨げてはならないのに、同人は、飲酒して正常な運転ができず前方注視も困難な状況であつたので、即時運転を中止すべき義務があるのにこれを怠り、制限速度毎時四〇キロメートルを超過する毎時五〇キロメートルで甲車を運転し、交差点に至るまで乙車を発見しなかつた過失により、乙車の車両後部に甲車を衝突せしめたものである。

四  同第四項は不知。

五  同第五項は認める。

六  同第六項は争う。

第四被告らの抗弁

一  (被告会社の免責の抗弁)

前記のとおり乙車の運転者被告小島に過失はなく、本件事故はもつぱら甲車の運転者田倉の過失により惹起されたものであり、また乙車には機能上の障害も構造上の欠陥もなかつた。

二  (過失相殺)

仮りに被告らの責任が認められるとしても、本件事故は、甲車の運転者田倉が飲酒酩酊のうえ運転した重大な過失により発生したもので、原告は、事故直前田倉と一緒に飲酒し、田倉が酩酊して正常な運転ができないのを知つていたのであるから、かかる場合、田倉が運転すれば事故発生の危険あることは充分予想できたのであり、原告としては田倉の運転を禁じ、且つ同乗するのを中止すべきであるのにあえて同人に運転させ、同乗したことは、原告に重大な過失があるというべきである。

他方、田倉は原告の依頼を受けて、原告の父所有の甲車を運転し、原告及び甲車を原告方に運搬しようとしていたのであるから、原告は単なる同乗者ではなく、運行供用者としての立場にあり、田倉は原告の身代りないしは被用者たる立場で運転していたというべきであり、原告と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられる関係あるいはそれに類似する関係にあつたものである。そうすると、本件事故は前記のとおり田倉の運転上の過失によつて発生したものであるが、田倉の右過失も原告側の過失としてこれと同視されるべきものである。

したがつて、損害賠償額を算定するにあたり以上の諸事情を斟酌すべきである。

第五被告らの抗弁に対する原告の答弁

一  本件事故の原因は、被告小島において、田倉の自動車が直進して来るのを知り、それが比較的近い距離であつたのにその直前を容易に右折できるものと誤つて判断し、且つ右折の合図をしないで右折にかかつた過失にあることが明らかである。

二  本件事故当夜、原告は飲酒して酔つたため、自動車の運転は完全に酔いが醒めてから自ら運転する考えで、このことを同席していた田倉らに話し、その場に眠つてしまつた。

そして、原告は本件事故発生まで、田倉が甲車を運転していることすらも知らず、助手席で眠つていたものである。

したがつて、原告は田倉に自動車の運転を依頼したことはない。田倉が甲車を運転したのは、もつぱら田倉自身の意思に基づき、その責任においてこれをなしたことによるものである。また、事件当夜田倉が運転していた甲車は原告の父吉川熊蔵の所有であり、同人が運行の用に供していたものであつて、原告は運行供用者ではなかつた。

したがつて、被告主張のような理由をもつて、田倉の運転上の過失を原告側の過失として斟酌することは失当である。

第六〔証拠関係略〕

理由

一  (事故の発生)

請求原因第一項中、原告の負うた傷害の程度を除いた事実は当事者間に争いがなく、〔証拠略〕によれば原告の負傷程度は原告主張のとおりであることが認められる。

二  (事故発生の態様)

〔証拠略〕を綜合すると左記の事実が認められ、〔証拠略〕中左記認定に反する部分は採用することができない。

1  事故現場の状況

本件事故現場は、日野橋方面から立川市役所方面へほぼ南北に通ずる幅員約一〇・三メートルの道路と、東方府中市方面へ通ずる甲州街道とがほぼ直角に交わり、そこから西方へは昭島市方面に通ずる二本の道路が放射状に分岐している所謂変形交差点(五差路)であり、日野橋ロータリーと通称され、信号機による交通整理が行われている。

2  甲車の状況

田倉は、呼気一リツトルにつき〇・五ミリグラム以上のアルコール分を身体に保有し、その影響により正常な運転ができないおそれがある状態で、甲車に訴外遠山謙及び原告を乗せて同車を運転し、立川市役所方面から日野橋方面に向かい制限時速四〇キロメートルを超える時速約五〇キロメートルで本件交差点に差しかかり、その約七二メートル手前で、日野橋方面から対向して来る乙車を認めたが、同車が直進するものと考え、進めの信号に従つてそのまま直進通過しようとしたところ、自車が交差点に進入する直前に至つてはじめて乙車が本件交差点で右折しているのに気付き、危険を感じて急制動を施したが及ばず、甲車の左側部と乙車の左後部、左側部(甲車の破損状況等よりして、主たる衝突部位は左後部と認められる。)とを衝突させた。

3  乙車の状況

被告小島は、乙車を運転して日野橋方面から本件交差点を右折して府中市方面に進行しようとし、時速約四〇キロメートルで本件交差点に接近し、進めの信号に従い、方向指示器による右折の合図を出したうえ、時速を約二〇キロメートルに減じて本件交差点に進入せんとした際、前方七〇ないし八〇メートル位に対向して来る甲車を認めたが、甲車の速度、両車間の距離等に対する安全の確認をしないまま、その前を十分右折し終えられるものと誤信し、そのまま交差点内に進入して右折を開始したため、自車が未だ右折し終らない状態で前段認定のとおり乙車と甲車とを衝突させた。

三  (被告らの責任原因)

1  被告小島の責任原因

前項に認定した事実によると、被告小島としては、本件交差点を右折しようとする場合において、これを直進しようとする車両があるときは、その進行を妨げてはならず(道路交通法三七条一項)、また右折する際には徐行しなければならないのであるから(同法三四条二項)、相互の車両の進行状況から見て、かかる交通法規を遵守しながら直進車との衝突の危険を生ずることなく安全に右折を完了するだけの相互車両間の距離、余裕のある場合でなければ右折をしてはならない注意義務があるのに、対向して来る甲車の動静、ことにその速度に対する安全の確認をしないまま時速約二〇キロメートル(右の速度をもつてはいまだ徐行義務を履行したものとはいえない。)で右折したことが、本件事故発生の一原因であることは明らかである。

したがつて、被告小島は、不法行為者として民法七〇九条により、原告の蒙つた後記損害を賠償する責任がある。

2  被告会社の責任原因

被告会社が乙車の所有者であり、これを自己のため運行の用に供していた者であることは当事者間に争いがない。被告会社は、自賠法三条但書の主張をするが(原告は必ずしも明確な答弁をしないが、弁論の全趣旨からしてこれを争つていることは明らかである。)、被告小島の無過失が認められないこと上記認定のとおりであるから、その余の点につき判断を加えるまでもなく、被告の右免責の抗弁は援用できない。したがつて、被告会社は、乙車の運行供用者としての責任を免れない。

四  (過失相殺)

〔証拠略〕を綜合すると、本件事故の前日である昭和四一年七月一七日午後八時三〇分ごろ、原告は、父熊蔵所有にかかる甲車を運転し、これに田倉及び訴外遠山謙の両名が同乗して東京都北多摩郡大和町所在のバー「シルビア」に赴き、一〇時過ぎごろから同店において三名でビール六本位を飲酒し、事故当日の午前一時前ごろ帰途についたが、その際原告が深く酩酊しており、自動車を運転できない状態であつたので、田倉が原告に代つて甲車を運転し、その運転席の左側座席に訴外遠山、さらに左端に原告が着席した状態で出発し、帰宅する途中、本件衝突事故が発生したこと、原告は右出発後事故に至るまで車内で眠つていたことが認められ、〔証拠略〕中右認定に反する部分は採用できない。しこうして、原告は、右店舗内において、酩酊のうえ居眠つてしまつたため、田倉が甲車を運転していることすら知らないままに車内で眠つていた旨主張するけれども、原告本人尋問の結果中右主張に副う部分は、右認定における甲車内での原告の着席位置等に照らしてたやすく採用することができない。

そこで、右認定の事実関係に基づいて判断するに、原告としては、甲車の運についてこれを事実上管理すべき立場にあつたこと、田倉らと共に飲酒すれば、自己が酩酊のため甲車を運転して帰宅することができなくなり、その場合田倉らにおいて、酒に酔つていながら原告に代つて甲車を運転し、帰途につく事態に立至ることのあるやも知れぬことを予見し得たのに、あえて田倉らと共に飲酒したこと、そして、自己が酩酊のため運転不可能の状態となるや、田倉が原告に代つて甲車を運転するがままに委ね、自らもこれに同乗したこと、すなわち、原告が甲車のエンジン・キー等を自ら把握して田倉らの運転を拒絶したような事跡を認むべき証拠も存在しない本件においては、原告は、田倉に対し運転を積極的に依頼したことはなかつたとしても、少なくとも同人が酒に酔つていながら原告に代つて甲車を運転することを容認し、且つこれに同乗したことが推認される。そして、前記認定の甲車の運転状況からすると、田倉の酒酔い運転が本件事故発生の一因をなしていることは明らかであるというべきであるから、原告の右不注意は、損害賠償額を算定するに当り、これを原告側の過失として斟酌すべきものであるところ、右に認定の諸事情に鑑みその七割を過失相殺するのが相当である。

ところで、被告らは、本件衝突事故における田倉の甲車運転上の過失内容をも原告側の過失として、これを損害賠償額算定につき斟酌すべきである旨主張するので考えるに、前記二項2に認定したとおり、田倉にも甲車運転について、酒気に影響された制限速度超過及び前方注視義務懈怠の過失があつたことが認められるから、畢竟本件衝突事故は、右田倉と被告小島の過失が競合して惹起されたものと言わねばならず、したがつて、右両名は原告に対し共同不法行為者としての責任を免れない。しかしながら、右共同不法行為者内部で過失内容に相違がある場合には、その責任の負担は、これを両者間の内部における求償の問題として解決すべきであり、原告との関係では、これを原告側の過失として斟酌するを得ないものと解さざるを得ない。そうだとすると、田倉の甲車運転上の過失はこれを原告側の過失として斟酌し得ないことに帰する。被告らのこの点についての主張は採用できない。

五  (損害)

1  休業損害

〔証拠略〕によると、原告は事故当時大工職として一日二、〇〇〇円を下らない収入を得ていたところ、本件事故による受傷のため事故の日より昭和四一年一一月三〇日まで一三六日間就業不可能となり、その間の稼働し得た一一一日分(一ケ月平均稼働日数二五日と認める。)金二二二、〇〇〇円の収入を得られなかつたことが認められる。

2  労働能力喪失による損害

〔証拠略〕によると、原告は昭和一八年四月二一日生の健康な男子であつたところ、本件事故により左上腕切断の後遺症を負い、大工職を断念せざるを得なくなつたことが認められ、その労働能力の喪失率は、原告の職業が大工職であつて可なり技術的な肉体労働を内容とする点等を考慮すると、原告主張の六〇%を下らないものと認められる(ちなみに、労働基準法施行規則別表第二〔身体障害等級表〕によると、原告の障害は第四級に属し、これを労働省労働基準局長通牒昭三二・七・二付基発五五一号の〔労働能力喪失率表〕に当嵌めれば、その労働能力喪失率は九二%である。)。しこうして、右後遺症の固定した時点は原告が温泉療養を経て、義手を製作した昭和四一年一二月ごろと推認され(〔証拠略〕によると、義手の製作代金を支払つたのは同月一日であることが認められる。)、その始点での原告の年令は二三歳余で、同年令の大工職の稼働年数は、原告の主張する六〇歳までの三七年を下ることはないものと認められる。ところで、前記認定したところにより、事故当時の平均収入を一日二、〇〇〇円、一ケ月の稼働日数を平均二五日として計算すると、一年間の平均収入は六〇〇、〇〇〇円となるから、これに右喪失率を乗ずると、一年間の損失額は三六〇、〇〇〇円となる。したがつて、得べかりし減収相当額の現価を、年毎複利式ホフマン法により中間利息年五分を控除して算出すれば、七、四二〇、〇〇〇円(一〇、〇〇〇円未満は切捨)となり、右同額の損害を蒙つたことが認められる。

3  治療費その他の支出

〔証拠略〕によると、原告は、本件事故による受傷のため、(一)左手焼却費五〇〇円、(二)入院費及び手術代等一七一、一〇〇円、(三)附添婦食事代九、二五〇円、(四)附添婦給料四八、九五〇円、(五)医師の指示に基づく温泉治療代三〇、四一八円、(六)通院費及び温泉行交通費等一、六五〇円(その余の請求額については証明不十分)、(七)義手代四二、五〇〇円、(八)氷代等及び(九)栄養食品代の合計一六、〇三九円(その余の請求額については証明不十分)、(十)済生会病院治療費六、九五五円を要したことが認められ、右の合計は三二七、三六二円となる。

4  右1ないし3に認定の損害額の合計は七、九六九、三六二円となるところ、前記認定の原告側の過失を斟酌し、その七割を減ずれば二、三九〇、八〇八円(円未満切捨)となる。

5  慰藉料

原告の受くべき慰藉料としては、前示原告側の過失を斟酌し、その他諸般の事情を考慮すると、六〇〇、〇〇〇円をもつて相当とする。

6  右4・5の合計は二、九九〇、八〇八円となるが、原告が自賠責保険金一、八六二、三九五円を受領したことは原告の自陳するところであるから、これを控除すれば、残額は一、一二八、四一三円となる。

六  (結論)

よつて、原告の本訴請求のうち被告らに対し各自一、一二八、四一三円及びこれに対する本件訴状送達の翌日であること記録上明らかな昭和四二年一〇月二一日から各完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は理由があるからこれを認容し、その余の部分は失当であるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 福島裕)

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